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花白は、態度ですぐにわかる。
俗に言うと「わかりやすい」人間だ。
あいつに言わせれば俺もその「わかりやすい」人間らしいが、自分でもよくはわからない。

とにかく、あいつは「わかりやすい」。

機嫌がいい時は、とにかく勢いよく抱きついてくる。
それなりの体格で力もあるんだから俺が受け止め切れるとは限らないというのに
それでもあいつは俺を信じて全身で抱きついてくる。

それはそれで、心から信じられているようでなんだか嬉しくもあるのだが。


けれども、何かを抱えているときは口数が少なくなる。
これはお互いに同じだと思いたい(希望形なのは、あいつに言わせると「玄冬はいつだって口数が少ないでしょ」ということらしいからだ)。
そうして、気付かぬうちにふと表情は暗い影を落として。

――きっと、俺に気を遣わせたくないのだろう。



そっと、控えめに。
身体が触れ合うか触れ合わないかぐらいに、抱きついてくるのだ。




「ねえ、くろ…わっ」
「……お前な、そういう中途半端な抱きつき方はよせ」
「………だからってそういう僕を勢いよく引き寄せるのもどうなの?しかも背中に」

背中から聞こえる声は埋もれていた。
しかし、数瞬の後くつくつと笑い声が漏れてきた。

「だから、玄冬は面白いんだよね」
「……なんでそうなる」
「なんでもなの」


背中から顔を上げてあははと笑う花白に俺が顔をゆがめていると「褒めてるんだよ?」といわれた。…何か嬉しくないが。


「とりあえず、抱きつくなら普通に抱きついてこい。――そうして欲しいなら、言え」
「………え」
「ん?」


俺は何かおかしいことを言っただろうか?
何故か花白の顔がみるみるうちに朱に染まるのを見て首をかしげていると、ぼふ、と音がして次の瞬間には彼の顔は再び俺の背中に埋まっていた。
………背中が熱い。


「………んなの」
「うん?」
「言えるわけ…ないじゃん、恥ずかしくて」
「無理はしなくてもいいが、ならあんな抱きつき方はよせよ」
「…善処します」
「よし」

俺としては中途半端に気持ちを隠されるのが嫌いなだけで、別に他意があるわけではない。
けれども、花白は何を思っているのかそのまま動かなかった。

「ほんと、君って優しいよね」
「そうか?」
「うん、優しすぎる。………」
「……おい、花白…」


こっちを向け、と言って正面から抱きしめると
花白は今度こそ甘えたようにして俺に抱きついてきたのだった。



人間はわかりやすい。
けれどもわかりにくいこともある。
態度だけでわからないこともあるんだ。
だから少しくらいは、言葉を。


不器用な俺に、向けて欲しい。



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*みこと様より*

キリリク絵(玄花)を送ったところ、こんな素敵な小説がっ!
許可を頂きましたので、宝物に載せました!花白が可愛いすぎるvV
有難う御座いました!!

2006/02/22up